業務効率化・改善

『少ない労力で大きな成果を!~保育園のための引き算思考法~』

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はじめに

働き方改革が叫ばれる中、業務の効率化と改善は、

すべての職場で求められる重要なテーマです。『保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドライン』が公開される等、保育園で働く人々も、一人ひとりが考えていくテーマと言えるでしょう。

しかし、業務改善や課題解決の中にはかえって負担や時間がかかってしまうものも存在します。例えば、特定の子どもの行動が危険と判断したため保育者を配置する、保育の質を向上させるため新たな取り組みを開始するといった、単に「もっと多くのことをする」という考え方に基づくアイデアです。これは、既に限界まで働いている人々にとっては、現実的ではないばかりか、時には反生産的な結果をもたらすこともあります。

そこで今回は、業務改善や課題解決において、「足し算思考(何かを追加して行う等)」ではなく、「引き算思考(何をしないかを決める)」の考え方についてお話します。

より少ない時間やリソースで最大の成果を出すために、どのようにして「引き算思考」を実践し、効率化と改善を実現できるのかを、解説。本質的な課題の見極め方から、具体的な行動計画の立案まで、読者が直面している挑戦を乗り越えるための実践的なアドバイスを提供します。

「足し算思考」と「引き算思考」

足し算思考

業務改善を目指す際、直感的に取ってしまいがちなアプローチは「足し算思考」に基づくアイデアです。これは、問題解決のために新たな活動を追加すること、例えば新しいツールを導入する、スタッフを増やす、新しくルールを増やすといった方法を指します。

一見すると、これらの策は問題に対する直接的な解決策のように見えますが、時として、危険な行動を伴う子どもに、一人職員をつけるといった改善策が、大多数の集団保育活動に支障をきたしたり、結果として時間やリソースの更なる浪費を招くことがあります。

引き算思考

一方で、「引き算思考」は、業務改善のために「何をしないか」を選択するアプローチです。この思考法は、不必要な活動を削除し、業務のシンプル化を図ることにより、限られた時間やツール、人的資源をより効果的に使用することを目指します。例えば、保育園における会議から、あまり効果の無い議題や本質的でない課題を削除することで、より質の高い対話や保育準備等に時間を割くことができます。

この「引き算思考」のアプローチは、保育園のようなリソースが限られた環境において特に有効です。時間や人員が限られている中で、本当に大切なことに集中するためには、何を優先すべきか、そして何をしないかを明確にすることが必須です。

どのように『引き算思考』を実行するか

業務の効率化と改善のため”何をしないか決める”ための考え方として、次の3ステップ(評価・捨てる・実行する)がわかりやすく非常に有効です。ここでは、例を通じて詳しくみていきます。

①評価

『評価』ステップでは、「本当にそれは必要か」「園の理念や保育の目的に合っているか」等、行っている業務や行動の多面的に、本質的な内容を見極めることから始めます。

「紙の連絡帳」を例に挙げるとわかりやすいかもしれません。連絡帳は、子どもたち一人ひとりの日々の活動や発達を記録するために保護者と保育者が時間を割いています。

まず、本来の連絡帳の目的を考えましょう。多くは保護者との成長や連絡事項等の情報共有でではないかと思います。

しかし、紙の連絡帳では、連絡帳を開いて確認(特に書かれていない場合もある)したり、1冊のノートを回覧する、印鑑を押す、かばんや特定の場所にしまう、入れ間違いのリスクを防ぐために注意する等。

本来必要のないことにも時間をかけている可能性があります。

そして、限りある時間。”どこかに時間をかける”ということは、”どこかに時間をかけない”ということ。

子どもたちとの対話や遊び、保育準備の時間を削ってしまっている場合、その価値と効率を見直してもよいかもしれません。

②捨てる

評価を通じて、改善の余地が見つかった業務を削減します。

例えば、本来の目的である成長や発達の共有と記録を達成するため、「長年同じであった連絡帳の冗長な項目を削る」「紙の連絡帳をやめる(そのためにICTを使用して連絡帳にして必要ない行動をしなくてよくする代替案も有効)」等、様々な方法が考えられます。

これにより、保育者は連絡帳の閲覧や記入に費やしていた時間(何かをしない・やめること)で、そこで使われていた時間や人に余裕ができます。

③実行する

そして「捨てる」ステップで生まれた時間を利用して、子どもたちとの関わりや質の高い保育準備の時間に集中します。

戸外での自然活動や保育環境準備にもっと時間を割くことが可能になります。これらは子どもたちの好奇心や興味に基づき、本来の保育の目的を達成するのに役立ちます。

ここで注意が必要なのは、時間ができることでその時間をどう使うか考えなくてはいけないということ。

『時間ができたから会議をしよう』『余裕ができたからこの行事をやってみよう』と無目的に使うのでなく、本質的に必要な部分にだけ時間をかけることを考え続けましょう。

あくまでこの改善方法は、本質的な目的に注力するための考え方であることを忘れずに。

さらに実行しやすくするための方法

先ほどの3ステップを実践する上で、次の具体的な2つの行動があると、より実行し続けやすくなります。

①「ノー」と言う勇気

新たに提案される業務や、個人にきた仕事等、目標に貢献しない場合は、それに対して「ノー」と言う決断力が求められます。

特にトップダウンの意思決定が多い職場では、効果が大きいです。

勇気が必要ですが、保育者が自身の時間とリソースを最も重要な業務や保育に集中させることを可能にします。

②定期的な振り返り

継続的な改善のためには、定期的な自己反省と業務の見直しが不可欠です。保育園全体で定期的に『何をやめるか・なにをしないか決める』『見直す』機会を設定し、どの業務が最も価値をもたらしているか、またどのようにプロセスを改善できるかを議論します。

このように、「評価→捨てる→実行する」の循環を起こすことで、保育園は効率的な業務運営を実現し、子どもたちにとっても、保育者にとっても、保護者にとってもより良い環境を提供することができます。

まとめ

この記事では、保育園での業務効率化と改善を目指す上で、『なにをするか』でなく『なにをしないか』『なにをやめるか』という考え方を提案してきました。

評価することで、業務の価値と必要性を冷静に見極める。

不要または低優先順位の業務を捨てることで、貴重な時間とリソースを生み出す。

最終的に、残された重要な業務に集中して実行することで、効率と効果を最大化する。

加えて、「ノー」と言う勇気を持ち、定期的な振り返りを行うことが、継続的な改善への鍵であることも強調しました。これらのステップと追加的な手段を組み合わせることで、保育園はより効率的で、より充実した環境を実現することが可能です。

保育園における業務効率化と改善は、単に作業負担を減らすだけでなく、保育の質を高めるための重要なステップです。このブログを通じて、各保育園が自らの環境に合った最適な業務改善策を見つけ出し、実行に移すことを願っています。