目次
個人情報について真剣に考える時が来た
保育園では、毎日たくさんの個人情報が取り扱われています。子どもたちの健康状態やアレルギー、緊急連絡先といった情報は、保育活動に欠かせないだけでなく、緊急時に子どもの命を守るためにも重要です。
しかし、そのような情報が適切に管理されていないと、保護者の信頼を失い、園全体の評判にも影響が及ぶ可能性があります。
個人情報の管理は、ただ集めて保管するだけでは不十分です。
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特に近年は、情報漏洩やサイバー攻撃といったリスクが増えており、保育園も例外ではありません。
こうした脅威から大切な情報を守るためには、法律やガイドラインに基づいた対策を徹底する必要があります。
この記事では、保育園での個人情報の取り扱いがなぜ重要なのか、そして、どうやって適切に管理し、保護するべきなのかを解説していきます。
【参考情報】
参考① 区立保育園(委託園)における 個人情報の紛失について(練馬区)
参考② 市立保育園における個人情報を記載した書類の紛失について(糸魚川市)
保育園で扱う個人情報の種類
まずは、保育園で扱う『情報』には、どんなものがあるのかを知っておきましょう。
具体的に、保育園がどのような情報を取り扱っているのかを以下にまとめます。
子どもに関する情報
- 基本的な情報
- 氏名、年齢、性別、生年月日
- 住所
- 保護者の連絡先
- 健康に関する情報
- 健康診断結果
- 予防接種の履歴
- アレルギーや持病、服薬状況
- 緊急時の医療対応に関する指示
- 日々の保育に関する情報
- 日々の体調記録(発熱、咳など)
- 食事や睡眠の状況
- 排泄状況やトイレトレーニングの進捗
- 行動や発達の記録
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保護者に関する情報
- 連絡に関する情報
- 緊急連絡先(保護者の職場や携帯電話番号)
- 代理連絡先(祖父母や親戚の連絡先)
- 緊急時の避難場所や対応の指示
- 家庭環境に関する情報
- 保護者の勤務先、職業
- 家族構成や同居する家族の状況
- 保護者のライフスタイルに関する特記事項(シフト勤務など、保育時間の調整に影響する情報)
- 保護者とのコミュニケーションに関する情報
- 保護者との連絡履歴
- 保育の方針や教育に関する意向
- 保護者からの相談内容や要望
情報漏洩と対策(モラル&知識編)
保育園での情報の管理は、それを扱う私たち一人ひとりの知識と行動も大きく関わってきます。
いくら優れたセキュリティシステムを導入しても、それを扱う人間が適切に運用しなければ、情報漏洩のリスクは避けられません。だからこそ、個人情報の大切さをしっかり理解することが重要です。
守秘義務
聞いたことがある人も多いかもしれませんが、改めて。私たち保育者には守秘義務が課せられます。これは、保育園で得た個人情報を外部に漏らしてはいけないという義務です。
たとえば、子どもの健康状態や家庭環境、保護者とのやり取りなど、日常的に職員が触れる情報には非常に繊細なものが含まれます。こうした情報を第三者に漏らすことは、保育園の信頼を損なうだけでなく、法律に違反することにもなりかねません。
そのため、どの情報が個人情報に該当するのか、どういった場面でリスクが高まるのか、不注意がどんな影響を与えるかなど、知っておきましょう。
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個人情報のを取り扱うために
個人情報を扱う上での基本ルール(情報を外に持ち出さない、共有フォルダの管理を徹底する、廃棄の際はシュレッダーを使うなど)を周知し、職員全員が統一したルール作りとそれを一人ひとりが実行する事が重要です。
デジタル機器を使用していても
デジタル機器を使う際にも注意が必要です。職員がパソコンやタブレットで情報を扱う場合には、適切なパスワード管理や、必要のない情報はすぐに削除する習慣を身につけることが大切です。
保育園のシステムに外部からの不正アクセスが起きないよう、基本的なセキュリティ対策を常に意識して行うことが求められます。
最終的には、こうした職員の意識と行動が個人情報の保護につながり、保育園全体のセキュリティレベルを高めることになります。
保護者は、安心して子どもを預けるために、保育園がどのように情報を扱っているかを気にしています。職員一人ひとりの行動が、その信頼を守る大切なカギとなるのです。
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情報漏洩と対策(技術編)
どれだけ注意深く個人情報を管理していても、情報漏洩やトラブルが完全に避けられるわけではありません。しかし、保育園が事前に適切なセキュリティ対策を講じることで、こうしたリスクを大幅に減らすことができます。
ここでは保育園で起きうる情報漏洩の例とその対応策を考えていきます。
紙の書類の紛失
保育園では、日々たくさんの書類を取り扱いますが、たとえば、子どもの健康情報や保護者の連絡先が記載された書類をうっかりどこかに置き忘れてしまったり無くすことは、重大な個人情報漏洩につながります。
こうしたトラブルを防ぐためには、書類の取り扱いに関して明確なルールを設け、常に管理体制を徹底することが必要です。
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対策
①書類の持ち出しと作成に関してルールを策定する
②紙書類の電子化
③書類の整理整頓
“③”は一見関係なさそうに見えますが、とても重要。書類がどこにあるかが分からない、無くしたことに気づけないということは情報が漏洩している可能性があるということ。こうならないよう、整理整頓をしましょう。
重要な書類は施錠された場所に保管し、書類の持ち出しやコピーを最小限に抑える工夫が有効です。
電子情報の漏洩
デジタルデータは、便利な反面、悪意ある第三者によって盗まれたり、不正アクセスを受ける可能性があります。
特に、パソコンやタブレットを使って個人情報を扱う保育園では、端末にパスワードを設定したり、データを暗号化したりすることが重要です。また、ウイルス対策ソフトを常に最新の状態に保ち、不審なメールやリンクを開かないように注意を促すことも大切なセキュリティ対策の一環です。
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対策
①データをパスワードでロックしておく
②USB等の制限
③不用意にファイルを開かない
④使用する際のルール作り
⑤ウイルス対策ソフトの使用
“③”は、外部からのサイバー攻撃を防ぐためにも必要不可欠です。
メールに添付されているからと言ってファイルを開くことでウイルスに感染する場合もあります。
ヒューマンエラー
セキュリティの観点から見逃せないのが、ヒューマンエラーです。
例えば、保育ICTツールを使用して保護者に情報を共有する際に、誤って別の保護者に送信してしまう、連絡帳を入れ間違えるというようなミスが発生することがあります。
このような場合、ただ謝罪するだけではなく、ミスを防ぐ仕組みを作ることが重要です。
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対策
①送信前に情報の確認を徹底する
②複数人でチェックする体制づくり
③チェックしなければいけない項目を決めておく
ミスを防ぐためのプロセスを強化することが求められます。
また上記のすべてに言えることですが、情報漏洩のリスク評価を定期的に行うことが有効です。
どの部分にリスクが潜んでいるかを明確にし、それに対してどのような対策を取るべきかを事前に考えることで、実際にトラブルが起こった際にも迅速に対応することができます。
実はNG×個人情報保護法と保育園の遵守すべきルール
保育園で個人情報を扱う際には、個人情報保護法を守ることが大前提です。
個人情報保護法は、個人のプライバシーを守るために定められた法律で、保育園もこの法律に基づいて情報を適切に管理する義務があります。
【参考情報】
改正個人情報保護法対応チェックポイント(個人情報保護委員会)
個人情報の取得目的を明確にしよう
入園時に保護者から提出される書類には、なぜその情報が必要なのか、どのように使われるのかを明確に説明しなければなりません。
保護者は自分たちの情報がどう使われるのかを理解した上で、安心して情報を提供できるようにすることが重要です。
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情報の利用範囲を限定する
保育園は、集めた個人情報を目的外の用途で使用してはいけません。
例えば、小学校や保育所等訪問支援の療育先から電話で特定の子どもについての情報を求められた場合。知っている相手だからと、保護者の承諾なしに伝えることはNG。特定の場合を除き行ってはいけません。
保護者からの情報開示や訂正の要求に応じる
保護者は、自分の子どもに関する情報が保育園でどのように扱われているかを知る権利がありますし、情報に誤りがある場合は、訂正や削除を求めることができます。
保育園側は、こうした要求に迅速かつ適切に対応することが求められています。
個人情報が漏洩してしまった場合、速やかに報告する
事故が発生した場合、まずは影響を受けた保護者に対して迅速に通知し、その後、問題が発生した原因を調査して適切な対策を講じます。また、再発防止策を策定し、同様の問題が起こらないよう、体制を見直すことも重要です。
こうした法律やルールをしっかり守ることで、保育園は保護者との信頼関係を築き、子どもたちが安心して過ごせる環境を提供できるようになります。
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保護者とのコミュニケーションも大切です。保育園がどのように日々個人情報を守っているか、保護者との対話を通じて伝えていくことが信頼を築くための鍵となります。定期的な保護者会や連絡帳、メール配信などを通じて、保育園の取り組みを適宜説明することで、保護者に対する透明性が確保され、信頼が強化されます。
適切な個人情報管理の重要性と今後の課題
保育園における個人情報の管理は、保育活動を円滑に進めるためだけでなく、保護者や子どもたちの信頼を守るためにも非常に重要です。子どもの健康状態や保護者の連絡先といった情報は、日常の保育だけでなく、緊急時の対応にも欠かせないものです。
しかし、それらの大切な情報を適切に管理しなければ、情報漏洩やプライバシー侵害といったリスクが生じ、保育園全体の信頼が損なわれる可能性があります。
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これまでに述べてきたように、保育園では個人情報を適切に収集し、明確な目的のもとで利用し、しっかりと保管することが求められます。
最終的には、保育園がどれだけ安全で信頼できる環境を提供できるかが、保護者が安心して子どもを預けられるかどうかにも直結します。個人情報の管理は、その基盤となる重要な要素であり、これからも継続的な改善が必要です。